論説

EDITORIAL

臨床試験(治験)登録:医学雑誌編集者国際委員会*からの声明

CLINICAL TRIAL REGISTRATION: A STATEMENT FROM THE INTERNATIONAL COMMITTEE OF MEDICAL JOURNAL EDITORS

*International Committee of Medical Journal Editors

 利他主義と信用は,人間を対象とした研究の核である。利他的な人たちは,治験に参加すれば他人の健康が改善され,研究者は参加者のリスクを最小限に抑えてくれると信用し,自発的に治験に参加する。治験を可能にするこの利他主義と信用に報いるために,研究を倫理的に行いその結果を率直に報告する義務が,研究を行う企業側にはある。たとえ研究の出資先の商品に不利な影響を与えるような治験であっても,率直な報告をするためには,まず全ての治験の存在を明らかにすることが第一である。

 残念なことに,治験を選択的に報告することは実際に行われており,それによって臨床的な意思決定の際に参考にするエビデンス本体が歪曲されている。一般的に,研究者たち(そして学術誌の編集者たち)が最も積極的なのは,新たな治療法の影響力の大きさや治験の報告(positive trials)か,もしくは2つの治療法の同等性についての報告(非劣性試験)に対してである。研究者たち(そして学術誌)は,新しい治療法が標準的な治療法よりも劣っていることを示す試験(negative trials)については概してあまり関心がなく,結論のあいまいな試験は,それだけでは臨床を変えることがないため,明らかにpositiveまたはnegativeでないものに対してはさらに関心がない。科学的価値に関係なく,経済的損失の恐れのある治験結果は特に,出版されず公にされない可能性が高い。出資者と著者に損失がおよぶ場合でも,誰でもすべての治験の存在とその重要な特徴についての情報を得ることができなければならない。

 治験の選択的な報告を行うべきでないのは,特に臨床での治療の主流に影響を及ぼす可能性のある研究の場合である。医療の現場を変えるのは,単一試験よりも,多くの研究から成る一連のエビデンスであることが多い。研究の出資者や研究者がある治験の存在を隠してしまえば,それらの研究が患者や臨床家やその他の研究者,ひいては臨床ガイドラインや保険規定を定める専門家の考えに影響を与えることは不可能である。もしすべての試験が開始時に公的なデータベースに登録されれば,すべての試験の存在が公的な記録の一部となり,治験における全ての関係者が,臨床所見の全容について調べることができる。しかし,治験登録は大部分が任意であるため,登録データの設定や公にアクセスが可能なデータ内容に幅があり,また登録事項には治験のごく一部に関する情報しか含まれていないため,理想とはかけ離れているというのが現状である。そこで,医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors: ICMJE)は,委員会の参加学術誌全誌で同時に掲載されるこの論説において,選択的な認知度問題の解決策として,包括的な治験登録を提案し,これを推進するためにICMJE会員である全11誌の方針として治験登録を採用することを宣言する。

 ICMJE会員である学術誌は,公的な治験登録機関への登録を,論文掲載を検討する条件として定める。治験登録は,患者登録の時点かそれ以前に行わなければならない。この指針は,2005年7月1日以降に登録を始めた治験すべてに適用される。同日付よりも前に患者登録が開始された治験については,2005年9月13日までに登録を完了しなければ,ICMJEの会員雑誌に投稿することはできない。この声明はICMJE会員雑誌に限っているが,他の生物化学雑誌の編集者も同様の指針を採用されることを強く奨励する。登録にあたり,ICMJEは,治験を医療介入と健康アウトカムの因果関係を研究することを目的として,人間を対象とし,治療または比較群にプロスペクティブに割り当てるすべての研究プロジェクトと定義する。薬物動態試験や毒性試験など,他の目的のためにデザインされた研究(例:第1相試験)は対象外である。

 ICMJEから特定の登録母体1つを支持することはしないが,著者はICMJEの定めたいくつかの基準に見合った登録母体に治験を登録する必要がある。登録母体は一般人も無料で閲覧できなければならない。登録母体は登録を考えているすべての研究者に対して公開されており,非営利組織によって運営されていなければならない。登録データの有効性を保証する仕組みが確立されており,また,登録母体の電子検索が可能であることも条件とする。登録母体には,最低でも,独自の識別番号,研究した治療や比較(複数の場合はすべて),研究の仮説についての記述,primary outcomeとsecondary outcomeの基準の定義,選択基準,重要な治験の日付(登録日,開始予定日または開始日,最終フォローアップ予定日または実際の最終フォローアップ日,データ登録締切り予定日または実際の締切日,治験データの完成日),対象数,資金源,治験責任者の連絡先といった情報が含まれなくてはならない。これらの条件を満たしている登録母体は,我々が知る限り,現状では米国国立医学図書館が提供しているwww.clinicaltrials.govのみであるが,現在または将来的に,これらすべての条件を満たす登録母体が他にも存在する可能性がある。

 登録は,目的地にたどり着くための方法の一部分に過ぎない。ここで言う目的とは,治験の実施と報告における,完全な透明性である。治験を公的に登録すれば,不必要な官僚的な遅れを招き,自分たちの研究計画を競合他社にすべて公開することで,競争力を失うことになると反論する研究出資者もいることだろう。私たちは,情報をすべて公開することによって研究機関に対する国民の信頼を強めることが,何よりも替えがたい利点だと主張する。自発的に治験に参加する患者たちに対して,人類の健康改善のために行われた貢献が医療現場の意思決定を提供するために公開されるよう保証しなければならない。参加者全体の利他主義によって実現した知識は,誰もが入手できるようにしなければならない。治験登録を義務化することは,この目標に近づくことになるだろう。

Catherine De Angelis, MD, MPH
Editor-in-Chief, Journal of the American Medical Association

Jeffery M. Drazen, MD
Editor-in-Chief, The New England Journal of Medicine

Professor Frank A. Frizelle, MBChB, MMedSc, FRACS
Editor, The New Zealand Medical Journal

Charlotte Hang, MD, PhD, MSc
Editor-in-Chief, Norwegian Medical Journal

John Hoery, MD
Editor, Canadian Medical Association Journal

Richard Horton, FRCP
Editor, The Lancet

Christine Laine, MD, MPH
Senior Deputy Editor, Annals of Internal Medicine

Ana Marusic, MD, PhD
Editor, Croatian Medical Journal

A. John P. M. Overbeke, MD, PhD
Executive Editor, Nederlands Tijdschrift voor Geneeskunde (Dutch Journal of Medicine)

Torben V. Schroeder, MD, DMSc
Editor, Journal of the Danish Medical Association

Harold C. Sox, MD
Editor, Annals of Internal Medicine

Martin B. Van Der Weyden, MD
Editor, The Medical Journal of Australia

別刷請求先: Customer Service, American College of Physicians, 190 N. Independence Mall West, Philadelphia, PA 19106.

Ann Intern Med. 2004; 141: 477-478.

Japanese translation of De Angelis C, et al. Clinical Trial Registration: A Statement from the International Committee of Medical Journal Editors. Ann Intern Med. 2004;141:477-478.